糖尿病とはどんな病気?


糖尿病とは「血糖値が高い状態が続く病気」です。
食事をすると、体は食べ物から得た糖質を分解し「ブドウ糖」として血液の中に取り込みます。ブドウ糖は体の大切なエネルギー源ですが、血液中の量が多すぎると血管に負担をかけます。そこで働くのが「インスリン」というホルモンです。
インスリンは膵臓から分泌され、血液中のブドウ糖を細胞に取り込み、血糖値を下げる役割を担っています。
しかし2型糖尿病では、このインスリンの効きが悪くなったり、分泌が不足したりすることで血糖値が下がらなくなります。高血糖の状態が長く続くと、血管が傷んで全身の様々な臓器に悪影響を及ぼしてしまうのです。
2型糖尿病の原因
糖尿病は「甘いものを食べすぎてなる病気」と思われがちですが、実際にはもっと複雑です。主な原因には以下のようなものがあります。
- 運動不足
筋肉をあまり使わないと、ブドウ糖を取り込む力が落ちます。 - 食べすぎ・飲みすぎ
特に炭水化物や甘い飲み物を摂りすぎると血糖値が上がりやすくなります。 - 肥満
特に内臓脂肪はインスリンの効きを悪くします。 - 体質(遺伝)
- 親や兄弟・姉妹に糖尿病の方がいると発症リスクが高まります。
- 加齢
年齢とともにインスリンの働きは弱くなります。
このように「生活習慣」と「体質」が重なって、糖尿病は発症します。
初期に出やすい症状
糖尿病は初期の段階では自覚症状がほとんどありません。症状が出てくる場合には、次のようなサインに気づくことがあります。
- のどが渇きやすい
- 尿の回数が増える
- 疲れやすい
- 体重が減ってくる
- 傷が治りにくい
ただし、これらは気づかないことも多く、「健康診断で初めて指摘された」という方も少なくありません。定期的な健診がとても大切です。
検査と診断
糖尿病の診断は主に 血液検査 で行います。
空腹時血糖値 | 126mg/dL以上 |
食後血糖値 | 200mg/dL 以上 |
HbA1c(過去1〜2か月の平均血糖) | 6.5%以上 |
これらの基準値の組み合わせで糖尿病と診断されます。また、尿に糖が出ていないかも確認します。健診で「要再検査」と言われたら放置せず、早めに受診しましょう。
治療の基本
糖尿病の治療にはいくつかの柱があります。大切なのは「薬に頼る前に生活習慣を整えること」です。
食事療法
- バランスよく食べる
- 主食・主菜・副菜を揃える
- 適量を守る
- 野菜から食べる「ベジファースト」や炭水化物を最後に食べる「カーボラスト」も効果的


運動療法
- ウォーキングなど軽めの有酸素運動
- 無理のない筋力トレーニング
などを毎日少しずつ続けることが大切です。


薬物療法
- 飲み薬(血糖を下げる薬)
- GLP-1受容体作動薬の注射
- インスリン注射
医師と相談して、最適な薬を一緒に選んでいきます。


合併症について
糖尿病を放置すると「合併症」と呼ばれる病気が起こることがあります。血管や神経にダメージが蓄積することで、さまざまな不調が出てきます。
- 糖尿病網膜症
視力低下や失明につながることも - 糖尿病腎症
腎臓の働きが悪くなり、透析が必要になることも - 糖尿病神経障害
手足のしびれや感覚の低下 - 動脈硬化
心筋梗塞や脳卒中のリスク上昇 - その他
歯周病や癌、認知症も糖尿病との関連が指摘されてます
合併症の初期には無症状のことも多くあります、定期的な合併症の検査が必要となります。
また、合併症の多くは「血糖管理をしっかり続けること」で予防できる可能性が高くなります。
日常生活でできる工夫
糖尿病と上手に向き合うためには「無理なく続けられる生活習慣」を見つけることが大切です。
- 食べすぎないように一口ごとにゆっくり食べる
- 階段を使う、少し歩くなど日常の運動を増やす
- 睡眠をしっかりとり、ストレスをためすぎない
- 定期的に血糖値やHbA1cをチェックする
- 医師や看護師、管理栄養士と一緒に生活改善の工夫をする
まとめ
2型糖尿病は「早めに気づき、きちんと向き合えばマネジメントできる病気」です。決して怖い病気ではなく、必要に応じて生活習慣を少しずつ見直すことで糖尿病のない人と変わらない生活を送ることができます。
気になる症状がある方や健診で指摘を受けた方は、放置せず一度医療機関に相談してください。あなたの体を守るための第一歩になります。


- 執筆者
- 山内 雅裕
ぎふ糖尿病・内科クリニックやまうち
院長/糖尿病専門医・内科医
当クリニックでは、糖尿病をはじめとする生活習慣病を専門としていますが、総合内科医としても、さまざまな病気の診療に対応しています。
- 所有資格
日本内科学会 認定内科医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医