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糖尿病の人が朝食を抜くと体の中で何が起きるのか?

糖尿病の人が朝食を抜くと体の中で何が起きるのか?

糖尿病×食事の話

📋 この記事でわかること(目次)

  1. 朝食を抜くと昼も夜も血糖値が乱れる理由
  2. 長期的な血糖値の状態(HbA1c)への影響
  3. なぜ朝食抜きで血糖値が乱れるのか?体の仕組み
  4. 朝食を抜くことで起こる5つの問題
  5. 「朝は食べられない」方への実践ヒント
  6. よくある質問(Q&A)

こんにちは。瑞穂市の「ぎふ糖尿病・内科クリニックやまうち」院長の山内です。

「朝は食欲がない」「忙しくて時間がない」「やせたいから抜いてみた」——そんな理由で朝ごはんを食べない日、ありませんか? 健康な人でも体によくないこの習慣は、糖尿病の方にとってはさらに深刻な影響をもたらします。 この記事では、糖尿病と朝食の関係を調べた論文6本をもとに、体の中で何が起きているのかをわかりやすく解説します。

糖尿病の人が朝食を抜くと、昼も夜も血糖値が乱れる
——「1食の節約」のつもりが1日分の損に

「朝に食べなかった分、お昼でちゃんと食べればOKでしょ」——そう思いがちですよね。しかし実際には、そうはいきません。

イスラエルの大学が行った研究(2015年)では、2型糖尿病の患者さん22人に「朝ごはんを食べる日」と「昼まで何も食べない日」を交互に体験してもらい、その後の血糖値を詳しく比べました。すると、朝ごはんを抜いた日は、昼ごはん・夕ごはんの後に血糖値がグンと上がりやすくなることがはっきりとわかりました。また、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの分泌も弱くなっていました。

📄 Jakubowicz D, et al. — Diabetes Care(米国糖尿病学会専門誌), 2015

2型糖尿病患者22名を対象に、「朝食あり」と「昼まで断食」の日を比較したランダム化比較実験。食後の血糖値・インスリン・腸管ホルモンの変化を測定。

つまり「糖尿病の人が朝食を抜く」という行為は、1食分の節約ではなく、その日1日の血糖値のリズムをまるごと崩してしまう行為なのです。最初に食べる食事が、その後の体の反応を決める「スイッチ」の役割を担っているためです。

朝ごはんは「1食」の問題じゃない。
その日1日の体のリズムを決める、最初のスイッチです。

朝食を抜く習慣は長期的な血糖値(HbA1c)も悪化させる
——毎日の積み重ねが数値に出る

1日の血糖値だけでなく、長い期間にわたる血糖の状態にも影響します。HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)という数値は、過去1〜2ヶ月の血糖値がどのくらい高かったかを示す指標で、糖尿病の管理状態を測るバロメーターです。これが高いほど糖尿病のコントロールが悪い状態を意味します。

京都府立医科大学が317人の患者さんを調べた研究(2020年)では、年齢・体重・運動習慣・薬の種類など様々な条件を考慮した上でも、朝食を抜く習慣があるだけでHbA1cが0.53%高いことが確認されました。一見小さな数字に見えますが、HbA1cの0.5%の差は合併症リスクにも影響する、意味のある変化です。

📄 Hashimoto Y, et al. — Nutrition(栄養学誌), 2020

京都府立医科大学が行った研究。2型糖尿病患者317名を対象に朝食スキップ習慣とHbA1cの関係を分析。年齢・BMI・生活習慣・薬剤などを調整した多変量解析でも独立した関連を確認。

さらにフィンランドで行われた1型糖尿病患者1,007人の大規模研究(2019年)でも、朝ごはんを食べない人は血糖値の管理が難しくなりやすいことが示されています。1型・2型どちらの糖尿病にも共通して見られる傾向です。

📄 Ahola AJ, et al. — Scientific Reports(Nature出版), 2019

フィンランドで1型糖尿病患者1,007名を対象に実施。食事の時間・回数・朝食の有無と血糖コントロールの関係を調査。朝食スキップ群で血糖管理が悪化する傾向を確認。

なぜ糖尿病の人が朝食を抜くと血糖値が乱れるの?
体の中で起きていること、5ステップで解説

「食べていないのに、なんで血糖値が悪くなるの?」——不思議に思いますよね。実は、朝ごはんを抜くと体の中でいくつかのことが連鎖的に起きています。

朝ごはんを抜く → 血糖値が乱れる5つのステップ

🌙① 朝の体は、もともと血糖値が上がりやすい状態にある

起きる前後、体は「目覚めの準備」として血糖値を上げるホルモンをたくさん出します。そのため朝の体は、もともとエネルギーが血液中に出回りやすいデリケートな状態にあります。

② 朝ごはんを抜くと、体の「時計」が狂い始める

食事は体の内側にある「体内時計」をリセットする合図でもあります。朝ごはんを抜くと、この体内時計が乱れ、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きも鈍くなってしまいます。

📉③ 昼ごはんを食べたとき、インスリンが十分に出なくなる

朝に何も食べないと、昼ごはんのときに腸から出るはずの「血糖値を下げる命令ホルモン」の量が減ります。結果として昼・夕の食後に血糖値が急激に上がりやすくなります(前述のイスラエルの研究で確認)。

🍽️④ お昼や夜に食べすぎてしまいやすい

朝に食べていない分、昼や夜にお腹がすきすぎて、つい食べすぎてしまいます。一気に大量のごはんを食べると血糖値が急上昇します。同じカロリーでも「分けて食べる」より「一気に食べる」方が体への負担は大きいのです。

📈⑤ 結果として、1日中血糖値が安定しなくなる

朝ごはんを抜くことは「1食分食べない」だけでなく、その後の体の働きを次々と狂わせる「ドミノ倒し」です。これが毎日続くと、長期的な血糖値の状態(HbA1c)が悪化し、合併症のリスクも高まります。

糖尿病の人が朝食を抜くことで起こる5つの問題

ここまでの内容を整理します。糖尿病の方が朝食を抜くことで、次の5つの問題が連鎖的に起きやすくなります。

🔺昼・夕食後の血糖値が急激に上がりやすくなる

朝食を抜いた日は昼・夕の食後血糖値が高くなりやすいことが実験で確認されている(Jakubowicz et al., 2015)

🔺長期的な血糖状態を示すHbA1cが上がる

毎日の朝食スキップの積み重ねが、数ヶ月単位の血糖管理の悪化につながることが複数の研究で示されている

⚠️体の「時計」が乱れ、インスリンが効きにくくなる

朝ごはんは体内時計をリセットする合図でもある。それが欠けると血糖値を下げる力が弱まる

⚠️夜型の生活リズムとの悪循環になりやすい

朝ごはんを抜く人は夜更かし・遅起きになりやすく、それ自体も血糖値の管理をさらに難しくする(Reutrakul et al., 2014)

ℹ️体重が増えやすくなる可能性がある

朝食スキップは体重増加と関連することが報告されている。ダイエット目的の朝食スキップは逆効果になることも(Mirghani H., 2021)

糖尿病でも「朝は食べられない…」という方へ
——今日からできる小さな一歩

「朝はどうしてもお腹がすかない」「準備する時間がない」という方も多いと思います。それでも、糖尿病の方にとって朝ごはんは血糖値を守る大切な習慣です。いきなり完璧にしなくていい。まずは小さなことから始めてみましょう。

🍳 無理なく朝ごはんを続けるための6つのヒント

  • 最初は少量でOK。ヨーグルト・ゆで卵・バナナ1本でも「朝ごはんを食べた」状態になります
  • たまご・豆腐・チーズなどたんぱく質を含む朝ごはんは腹持ちが良く、その後の血糖値の上がり方もゆるやかになりやすいです
  • 前の夜に翌朝分を用意しておくと、忙しい朝でもサッと食べられます
  • 「朝しっかり・夜軽め」の食べ方は、1日の血糖値を落ち着かせやすいパターンとして注目されています(Jakubowicz ら、2021年レビュー)
  • 食欲がない日は、起きてから30分以内にまず水か牛乳を飲むことから始めてみましょう
  • 具体的な食事内容や量は個人の病状・薬の種類によって異なります。かかりつけのお医者さんや栄養士さんに相談するのが一番です

まとめ——糖尿病と朝食の関係

糖尿病の方が朝食を抜くことは、一見「食べる量を減らしているだけ」のように見えます。しかし実際には、その日1日の血糖値のリズムを崩し、長期的な体の管理も難しくしてしまうことが、複数の論文で明らかになっています。

何を食べるか」と同じくらい、「いつ食べるか」も体に深く関わっています。朝ごはんは、糖尿病の方にとって血糖値を守るための大切な習慣のひとつです。

自分のペースで続けられる朝ごはんのスタイルを見つけ、ぜひお医者さんや栄養士さんと一緒に取り組んでみてください。

よくある質問(Q&A)

Q 糖尿病の人が朝食を抜くとどうなりますか?▼

A 朝食を抜くと、昼ごはん・夕ごはんの後に血糖値が急激に上がりやすくなります。これは、朝食がないと血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きが弱くなるためです。イスラエルの研究(Jakubowicz et al., 2015)では、朝食を抜いた日は食後の血糖値が明らかに高くなることが確認されています。さらに毎日続けると、長期的な血糖の状態を示すHbA1cも悪化していきます。

Q 朝食を抜くとHbA1cは上がりますか?▼

A はい、上がる可能性があります。京都府立医科大学の研究(Hashimoto et al., 2020)では、朝食を抜く習慣のある2型糖尿病の患者さんは、毎朝食べる人と比べてHbA1cが平均0.53%高いことが示されました。HbA1cは過去1〜2ヶ月の血糖値の平均的な状態を反映する数値で、0.5%の差でも合併症リスクに影響するとされます。

Q なぜ朝食を抜くだけで血糖値が乱れるのですか?▼

A 主な理由は3つあります。①朝は体がもともと血糖値を上げやすい状態にある、②朝食がないと体内時計が乱れてインスリンの効きが悪くなる、③昼・夕に食べすぎて一度に血糖値が急上昇しやすくなる——です。これらが重なることで、1日を通じて血糖値が不安定な状態が続きます。

Q 糖尿病でも朝食を食べなくていい場合はありますか?▼

A 薬の種類によっては、服薬のタイミングや低血糖のリスクを考慮して食事のスケジュールを調整するケースがあります。ただし、自己判断で朝食を抜くのはリスクが伴います。食事の内容やタイミングについては、必ずかかりつけのお医者さんや栄養士さんに相談してください。

Q 糖尿病の人の朝食は何を食べればよいですか?▼

A たまご・豆腐・ヨーグルトなどたんぱく質(体を作る栄養素)を含む食品は、腹持ちが良く食後の血糖値の上がり方をゆるやかにする効果が期待できます。少量でもいいので毎日食べる習慣をつけることが大切です。具体的な食事内容は個人の病状や薬によって異なるため、担当のお医者さんや栄養士さんに相談するのがベストです。

Q 朝食を抜くと体重が増えますか?▼

A 朝食を抜くとお昼や夜に食べすぎてしまいやすく、かえって体重が増えてしまう可能性があります。「ダイエットのために朝食を抜いている」という方は注意が必要です。朝食スキップと体重増加・肥満リスクの関連は複数の研究で報告されています(Mirghani H., 2021)。

Q 1型糖尿病でも朝食を抜くと影響がありますか?▼

A はい、影響があります。フィンランドで1型糖尿病の患者さん1,007人を対象に行われた研究(Ahola et al., 2019)でも、朝食を食べない人は血糖値の管理が悪くなりやすいことが示されています。1型・2型を問わず、朝ごはんは血糖値を守るための大切な習慣のひとつです。

参考にした論文

1. Jakubowicz D, et al. “Fasting Until Noon Triggers Increased Postprandial Hyperglycemia and Impaired Insulin Response After Lunch and Dinner in Individuals With Type 2 Diabetes.” Diabetes Care. 2015;38(10):1820–1826.

2. Hashimoto Y, et al. “Skipping breakfast is associated with glycemic variability in patients with type 2 diabetes.” Nutrition. 2020;71:110639.

3. Ahola AJ, et al. “Meal timing, meal frequency, and breakfast skipping in adult individuals with type 1 diabetes – associations with glycaemic control.” Scientific Reports. 2019;9:20063.

4. Reutrakul S, et al. “The relationship between breakfast skipping, chronotype, and glycemic control in type 2 diabetes.” Chronobiology International. 2014;31(1):64–71.

5. Mirghani H. “The Effect of Breakfast Skipping and Late Night Eating on Body Mass Index and Glycemic Control Among Patients With Type 2 Diabetes Mellitus.” Cureus. 2021;13(6):e15853.

6. Ogata H, et al. “Effect of skipping breakfast for 6 days on energy metabolism and diurnal rhythm of blood glucose in young healthy Japanese males.” American Journal of Clinical Nutrition. 2019;110(1):41–52.

※ この記事は医療のアドバイスを提供するものではありません。食事の内容や治療については、必ずかかりつけのお医者さんや栄養士さんにご相談ください。

山内 雅裕
執筆者
山内 雅裕

ぎふ糖尿病・内科クリニックやまうち

院長/糖尿病専門医・内科医

岐阜地区の様々な規模の病院で20年以上にわたり幅広い経験を積んできました。その経験から、病気の予防や早期発見、総合的な診療の重要性を痛感し、当クリニックを開業するに至りました。
当クリニックでは、糖尿病をはじめとする生活習慣病を専門としていますが、総合内科医としても、さまざまな病気の診療に対応しています。
所有資格

日本内科学会 認定内科医

日本糖尿病学会 糖尿病専門医