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睡眠は血糖コントロールの“隠れた名脇役” 〜私の指輪の秘密〜

睡眠は血糖コントロールの“隠れた名脇役” 〜私の指輪の秘密〜

こんにちは。 ぎふ糖尿病・内科クリニックやまうち 院長の山内です。

最近、診察中に私の右手のひとさし指に「銀色のリング」がはまっていることに気づかれた患者さんもいらっしゃるかもしれません。

「先生、それファッションですか?」と聞かれることもあるのですが、実はこれ、ファッションではないんです。 **「スマートリング」**といって、日々の活動量や睡眠の状態をモニターするためのデバイス(計測器)なんです。

私自身、今年は特に**「睡眠の質を改善して日常のパフォーマンスを上げること」**をひとつの目標にしています。 そして実は、糖尿病を持つ方にとっても「睡眠」は極めて重要であることがわかっています。

今日は、私の指輪の秘密と共に、睡眠と血糖値の深い関係についてお話ししたいと思います。


睡眠は、血糖値に大きく影響します

糖尿病の治療というと、以下の3つが中心だと思われがちです。

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 薬物療法

もちろんどれも非常に大切なのですが、実はもうひとつ、見落とされがちな重要な要素があります。 それが――**「睡眠」**です。

最近の医学研究では、**「睡眠の長さや質が、血糖コントロールに大きく関係する」**ということが、かなりはっきりわかってきています。


睡眠不足は「インスリンの効き」を悪くする

人は睡眠が不足すると、体の中で次のような変化が起こります。

  • ストレスホルモンが増える
  • 自律神経のバランスが乱れる
  • 体の中で炎症が起こりやすくなる

その結果として、**インスリンが効きにくい体の状態(インスリン抵抗性)になりやすくなります。 簡単に言えば、「睡眠不足 = 血糖が上がりやすい体になってしまう」**ということです。

わずかな睡眠不足でも影響が出ます

驚くことに、「数日〜1週間ほど睡眠時間を短くしただけ」という実験でも、インスリンの効きが悪くなったという報告があります。

  • 仕事が忙しくて夜更かしが続いた
  • 生活リズムが少し乱れた

といった比較的短期間の変化だけでも、体の中では血糖値に悪い影響が出てしまう可能性があるのです。


糖尿病の方では「長さ」も「質」も重要

すでに糖尿病をお持ちの方にとっても、睡眠は重要です。 最近の研究では、「短すぎる睡眠」も「長すぎる睡眠」も、そして「質の悪い睡眠」も、いずれもHbA1cが高くなりやすいことと関連していると言われています。

だいたい7時間前後を目安に、毎日同じリズムで眠ることが理想的です。 「短いのもダメ、長いのもダメ、質が悪いのもダメ」という、いわばU字型の関係があるわけです。


見逃されやすい「睡眠時無呼吸症候群」

睡眠と血糖の関係でもうひとつ、非常に大切なのが**「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」**です。

  • 大きないびきをかく
  • 睡眠中に呼吸が止まる
  • 日中に強い眠気がある

このような症状がある場合、夜間に体の中で「低酸素状態」が起き、強いストレスがかかっています。これがインスリンの効きを悪くし、血糖コントロールを悪化させる大きな原因になります。

実際に、CPAP(シーパップ)という無呼吸の治療を行うことで、HbA1cが改善したという報告も多くあります。 「もしかして?」と思われた方は、血糖管理のためにも一度ご相談ください。


今日からできる「血糖にやさしい睡眠」のポイント

では、具体的にどんなことに気をつければよいのでしょうか。

まずは“規則正しさ”を意識する

理想的な睡眠時間には個人差がありますが、**「毎日できるだけ同じ時間に寝て、同じ時間に起きること」**が何よりも大切です。休日の極端な寝だめや、平日の夜更かしは、血糖の面からもあまりおすすめできません。

寝る前の習慣を整える

特に次の点は、睡眠の質に大きく影響します。

  • 寝る直前の食事や間食
  • 寝る前のアルコール
  • スマホやPCの強い光

これらは睡眠を浅くし、翌日の血糖を乱しやすくします。

睡眠を“見える化”してみる

私が右手にスマートリングをつけているのも、自分の睡眠を客観的に知るためです。

  • 何時間眠れているか
  • 途中で何回起きているか
  • 深い睡眠がどれくらいあるか

これらを知るだけでも、生活を見直すきっかけになります。 最近ではスマートリングだけでなく、スマートフォンのアプリ(有名なものでは『Pokémon Sleep(ポケモンスリープ)』など)でも睡眠のログをとることができます。楽しみながら記録をつけてみるのも良い方法ですね。


まとめ:睡眠は立派な“治療の一部”

これまで糖尿病の治療では、食事・運動・お薬が中心でした。 しかし最近の知見を見ていると、**「良い睡眠は、血糖コントロールの大切な土台」**であることは間違いありません。

私自身もスマートリングを活用しながら、まずは自分の睡眠をしっかり整え、日々の診療(や趣味の活動!)のパフォーマンスを上げていこうと思っています。

みなさんもぜひ、「睡眠」という視点を、血糖コントロールの仲間に加えてみてください。


参考文献

  1. Buxton OM, et al. Sleep Restriction for 1 Week Reduces Insulin Sensitivity in Healthy Men. Diabetes. 2010.
  2. Spiegel K, Leproult R, Van Cauter E. Sleep loss: a novel risk factor for insulin resistance and Type 2 diabetes. J Appl Physiol. 2005.
  3. Lee SWH, et al. The impact of sleep amount and sleep quality on glycemic control in type 2 diabetes: A systematic review and meta-analysis. Sleep Med. 2017.
  4. Herth J, et al. Effects of CPAP therapy on glucose metabolism in patients with obstructive sleep apnea and type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. Eur Respir Rev. 2023.
  5. Jung I, et al. Sleep Duration and the Risk of Type 2 Diabetes. Endocrinol Metab. 2023.
山内 雅裕
執筆者
山内 雅裕

ぎふ糖尿病・内科クリニックやまうち

院長/糖尿病専門医・内科医

岐阜地区の様々な規模の病院で20年以上にわたり幅広い経験を積んできました。その経験から、病気の予防や早期発見、総合的な診療の重要性を痛感し、当クリニックを開業するに至りました。
当クリニックでは、糖尿病をはじめとする生活習慣病を専門としていますが、総合内科医としても、さまざまな病気の診療に対応しています。
所有資格

日本内科学会 認定内科医

日本糖尿病学会 糖尿病専門医