歯磨きは「全身の健康」に関係する?


糖尿病・心臓病・腎臓病との意外なつながりをわかりやすく解説
岐阜県瑞穂市のぎふ糖尿病・内科クリニックやまうちの院長山内(糖尿病専門医)です。
皆さん、「歯磨き」きちんとしていますか?
今日は歯磨きと内科の様々な病気との関係について解説していきたいと思います。
「歯磨きは虫歯を防ぐためのもの」
そう思っている方がほとんどだと思います。
しかし近年の研究では、
歯磨きや歯ぐきの健康(歯周病)と、全身の病気との関係が数多く報告されています。
特に関係があるとされているのは、
- 糖尿病
- 心筋梗塞・脳卒中などの心臓や血管の病気
- 心房細動(不整脈)
- 高血圧
- 慢性腎臓病
- 肺炎(特に高齢の方)
です。
この記事では、「なぜ歯磨きが大切なのか」を解説します。
なぜ口の中が体に影響するの?
ポイントは「炎症(えんしょう)」です。
歯周病とは、
歯ぐきにばい菌が入り込み、長く炎症が続く病気です。
炎症が続くと、
- 血糖値が上がりやすくなる
- 血管が傷みやすくなる
- 動脈硬化が進みやすくなる
と考えられています。
つまり、
口の中の炎症が、体全体に影響する可能性があるのです。
① 歯磨きと糖尿病の関係
大規模な研究では、
✔ 歯磨き回数が少ない人
✔ 歯周病がある人
で、糖尿病になる人が多いという結果が報告されています。
また、糖尿病がある方は歯周病になりやすいことも分かっています。
つまり、
糖尿病 ↔ 歯周病
お互いに悪影響を与え合う関係
と考えられています。


② 歯磨きと心臓病・脳卒中
歯周病がある人では、
- 心筋梗塞
- 脳卒中
などが多いことが、多くの研究で示されています。
歯磨きの回数が少ない人のほうが、
心臓や血管の病気が多いという報告もあります。
ただし、
「歯磨きを増やせば必ず心臓病を防げる」と
100%証明されたわけではありません。
しかし、関連は強く示されています。
③ 不整脈(心房細動)との関係
定期的に歯科受診をしている人や、
よく歯磨きをしている人では、
心房細動(脈が乱れる病気)や心不全が少なかった
という研究もあります。
④ 高血圧との関係
歯磨きが少ない人で
高血圧が多いというメタ解析(複数研究をまとめた信頼性の高い解析)も報告されています。
⑤ 腎臓病との関係
慢性腎臓病(CKD)がある方では、
歯周病が多いことが報告されています。
炎症が続くことが影響している可能性があります。
⑥ 肺炎との関係(特に高齢の方)
高齢者や入院中の方では、
口の中をきれいに保つことで肺炎が減る可能性
が示されています。
これは、口の中のばい菌が誤って気道に入ることによって起こる肺炎を防ぐためです。
結論:歯磨きは「全身の生活習慣」の一部
歯磨きは、
✔ 体に悪いことはまずありません
✔ 続けることでメリットが期待できる習慣です
ただし、
歯磨きだけで病気を完全に防げるわけではありません。
食事、運動、体重管理、禁煙などと合わせて
「健康習慣のひとつ」として取り入れることが大切です。
また食後すぐに歯を磨くことで、だらだら食べや食後の間食を控える効果もあると考えられており、ダイエットや血糖マネジメントにも良い効果があると考えます。
🦷 どれくらい磨けばいい?
一般的な目安は、
- 1日2回以上、毎食後が理想(特に寝る前は大切)
- 歯間ブラシやフロスも使う
- 歯ぐきから血が出る場合は歯科受診
糖尿病や高血圧がある方は、
歯科での定期チェックもおすすめです。
【よくある質問Q&A】
Q1. 歯磨きをしないと糖尿病になりますか?
必ずなるわけではありません。
しかし、歯周病がある人では糖尿病が多いという研究があります。
Q2. 糖尿病があると歯周病になりやすいですか?
はい。血糖値が高い状態が続くと、歯ぐきの炎症が起きやすくなります。
Q3. 歯磨きは1日何回が理想ですか?
最低2回、理想は毎食後の3回、特に寝る前はしっかり磨きましょう。
Q4. 歯磨きだけで生活習慣病は防げますか?
いいえ。食事・運動・体重管理などと合わせることが重要です。
Q5. 歯ぐきから血が出るのは普通ですか?
いいえ。歯周病の可能性があります。歯科で相談しましょう。
🔎 ポイントまとめ
✔ 歯周病は「体の炎症」と関係している
✔ 糖尿病・心臓病・腎臓病との関連が報告されている
✔ 因果関係は完全には証明されていないが関連は強い
✔ 歯磨きは“やらない理由がない”健康習慣
参考文献(原著論文・主要レビュー)
- Chang Y, et al. Oral hygiene and risk of new-onset diabetes mellitus. Diabetologia. 2020.
- Kuwabara M, et al. Associations of oral hygiene behavior with metabolic syndrome and diabetes. 2017.
- Chang Y, et al. Improved oral hygiene and risk of atrial fibrillation and heart failure. Eur J Prev Cardiol. 2020.
- Liu Y, et al. Tooth brushing frequency and cardiovascular disease: Meta-analysis. 2024.
- Zou L, et al. Tooth brushing frequency and hypertension: Meta-analysis. 2022.
- Yang F, et al. Periodontitis and chronic kidney disease: Meta-analysis. 2024.
- Lockhart PB, et al. Periodontal disease and atherosclerotic vascular disease. Circulation. 2012.
- Cochrane Review. Oral care for preventing pneumonia in older people.
- Ehrenzeller S, et al. Toothbrushing and hospital-acquired pneumonia: Systematic review. JAMA Intern Med.


- 執筆者
- 山内 雅裕
ぎふ糖尿病・内科クリニックやまうち
院長/糖尿病専門医・内科医
当クリニックでは、糖尿病をはじめとする生活習慣病を専門としていますが、総合内科医としても、さまざまな病気の診療に対応しています。
- 所有資格
日本内科学会 認定内科医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医


