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納豆などの発酵食品は健康にいい?

納豆などの発酵食品は健康にいい?

糖尿病・腸内環境・血管・骨への影響を最新医学論文から解説

 

はじめに 〜毎朝の私の楽しみ〜

こんにちは。瑞穂市の「ぎふ糖尿病・内科クリニックやまうち」院長の山内です。

突然ですが、私は納豆が大好きで、ほぼ毎朝食べています。

「先生、健康のために食べているんですよね?」と聞かれますが、正直に言うと……

「もちろん健康に良いから」という理由もありますが、単純においしいから続いているというのが本音です(笑)。

さらに最近はヨーグルトメーカーを自宅に導入して、ヨーグルトを手作りするようにもなりました。市販品を種にするだけで意外と簡単にでき、酸味もマイルドでとても美味しいです。

納豆やヨーグルトのような発酵食品について、外来でも患者さんからよくこんな質問をいただきます。

  • 「納豆は糖尿病に良いですか?毎日食べていいですか?」
  • 「ヨーグルトを毎日食べると糖尿病を予防できると聞いたのですが、本当ですか?」
  • 「腸活のために発酵食品を食べているのですが、どれが一番いいですか?」

こうした疑問にきちんとお答えしたいと思い、今回は最新の医学研究(原著論文)をもとに、糖尿病専門医の立場からわかりやすく解説します。

「健康にいい」と言われることと、実際の医学的エビデンス(科学的根拠)は必ずしも一致しないこともあります。少し長いですが、ぜひ最後まで読んでみてください。

発酵食品ってそもそも何?

「発酵食品」とは、微生物(細菌・酵母・カビなど)の働きによって作られた食品のことです。

発酵によって食品の中に次のような変化が起こります。

  • 消化しやすい成分に分解される
  • ビタミン・酵素などの有用な物質が増える
  • 腸内の善玉菌を増やす菌・物質が生まれる
  • 保存性が高まる
代表的な発酵食品含まれる主な微生物・成分
納豆バチルス菌・ナットウキナーゼ・ビタミンK2(MK-7)
みそ・醤油麹菌・乳酸菌・酵母 → 大豆イソフラボン
ヨーグルト乳酸菌・ビフィズス菌
キムチ・ぬか漬け植物性乳酸菌
チーズ・ケフィア乳酸菌・酵母 → ビタミンK2含むものも

日本は世界有数の発酵食品大国です。みそ・醤油・納豆・漬物など、毎日の食卓に自然と発酵食品が並んでいます。この「和食の文化」が日本人の健康に貢献してきた可能性を、近年の研究が次々と明らかにしています。

🫀 「血液サラサラ」は本当だった 〜1,062人の臨床研究〜

「納豆は血液をサラサラにする」という話を聞いたことがある方は多いと思います。これは医学的に根拠のある話です。

その主役が「ナットウキナーゼ」という酵素です。血管の中にできた血の固まり(血栓)を溶かし、血流をよくする働きがあります。

2022年に医学雑誌『Frontiers in Cardiovascular Medicine』に発表された大規模臨床研究(参加者1,062名・平均年齢67.5歳・12か月間追跡)では、次の結果が確認されました。

評価項目結果
悪玉コレステロール(LDL)84.3%の参加者で低下
善玉コレステロール(HDL)平均15.8%上昇(統計的に有意)
頸動脈の動脈硬化(プラーク)厚みが有意に縮小
副作用報告なし

さらに、日本人約3万人を追跡した大規模研究(Takayama study / Am J Clin Nutr. 2017)でも、納豆の摂取量が多い人ほど心血管疾患による死亡リスクが低かったことが示されています。

💡 医師からのコメント
ただし、これらの研究は「観察研究」や「後ろ向き研究」が中心です。「納豆を食べれば心臓病が防げる」と断定することはできません。あくまで「習慣的に食べている人のリスクが低い傾向がある」という関連性です。食事以外の生活習慣も含めた総合的な取り組みが大切です。

🦴 骨を強くする「ビタミンK2(MK-7)」

納豆のもうひとつの注目成分が「ビタミンK2(MK-7)」です。骨の健康に欠かせない成分で、カルシウムを骨にしっかり届ける働きをします。

面白いことに、生の大豆にはビタミンKがわずか0.5μg/gしか含まれていませんが、納豆に発酵させることで約10μg/gと、実に20倍近くにまで増加します。

2025年に発表されたメタアナリシス(6研究・2,327名のデータを統合した信頼性の高い分析)では、次のことが示されています。

  • 納豆を習慣的に食べている人は血液中のビタミンK2(MK-7)が有意に高い
  • 骨を作るたんぱく質(オステオカルシン)の活性が高まる
  • 閉経後の女性で骨密度の低下が抑えられ、骨折リスクが下がる

さらに重要なのは、ビタミンK2には「骨を強くする」働きだけでなく、「血管へのカルシウムの沈着(血管石灰化)を防ぐ」効果もあることです。骨と血管の両方を同時にケアできる、まさに一石二鳥の栄養素なのです。

⚠️ カルシウムだけでは骨に届かない?
「カルシウムをしっかり摂っているのに骨粗鬆症が改善しない……」というご相談をよくいただきます。カルシウムを骨に定着させるにはビタミンK2とビタミンDが必要です。納豆(ビタミンK2)+魚・日光浴(ビタミンD)の組み合わせが特に効果的です。

🦠 「腸活」の科学 〜腸は第二の脳〜

近年、医学界で最も注目されているテーマのひとつが「腸内細菌(腸内マイクロバイオーム)」です。

私たちの腸には約100兆個もの細菌が生息しており、このバランスが全身の健康を左右することがわかってきました。腸内細菌が関わっているとされる病気・状態は驚くほど多岐にわたります。

  • 2型糖尿病・肥満
  • 心血管疾患
  • うつ・不安障害(腸脳相関)
  • 免疫疾患・アレルギー
  • 一部のがん

世界的な科学誌『Cell』(2021年・Wastyk HC ら)に掲載された研究では、発酵食品を多く摂取したグループで次の変化が確認されました。

  • 腸内細菌の種類(多様性)が増加した
  • 炎症を示す血液マーカー(炎症性サイトカイン)が低下した

腸内細菌の「多様性」は健康のバロメーターと言われています。さまざまな種類の発酵食品を組み合わせることで、異なる善玉菌を腸に届けることができます。

また2025年に発表されたレビュー論文(Journal of Ethnic Foods)では、納豆・みそ・キムチなどアジアの発酵食品が腸内フローラの多様性を高め、「短鎖脂肪酸(SCFA)」の産生を増やすことが確認されています。SCFAは腸管バリア機能を強化し、全身の炎症を抑える働きをします。

さらに2025年の無作為化二重盲検試験(最も信頼性の高い研究手法)では、納豆粉末を4週間継続した健康な成人で、お通じの改善・気分の向上・睡眠の質の改善傾向が確認されています。

🥛 ヨーグルトで糖尿病リスクが下がる?

私が糖尿病専門医として特に注目しているのが「ヨーグルトと2型糖尿病の関係」です。

欧州の大規模研究(Diabetologia, 2014 / O’Connor LM ら)では、ヨーグルトの摂取量が多い人ほど2型糖尿病の発症リスクが低いという関連が報告されています。また韓国の研究(Ann Nutr Metab, 2013 / An SY ら)では、糖尿病予備群の患者がキムチを食べ続けた結果、インスリン感受性(血糖の調節機能)が改善したことが示されました。

なぜ発酵食品が血糖コントロールに関わるのでしょうか?現在考えられているメカニズムは次の通りです。

  • 腸内細菌の改善 → インスリン感受性(効きやすさ)の向上
  • 短鎖脂肪酸(SCFA)産生 → 食後血糖上昇の抑制
  • 乳酸菌・ビフィズス菌 → 慢性炎症の抑制
⚠️ 糖尿病の方へ ヨーグルト選びのポイント  
✅ おすすめ:無糖のプレーンヨーグルト(100〜150g/日)
❌ 注意が必要:加糖ヨーグルト・フルーツヨーグルト・飲むヨーグルト(糖分が多い)   糖尿病の方はヨーグルトそのものよりも「何ヨーグルトを食べるか」が重要です。甘いフルーツヨーグルトや加糖タイプは血糖を上昇させることがあります。

また納豆は食物繊維・たんぱく質が豊富で、血糖値が急上昇しにくい食品(低GI食品)です。糖尿病の方でも安心して食べていただけます。むしろ積極的に取り入れていただきたい食品のひとつです。

🌿 今日から始める 発酵食品のかしこい取り入れ方

おすすめの組み合わせ例

食事・タイミングおすすめ発酵食品と組み合わせのコツ
朝食納豆1パック+温かいご飯(乗せてから混ぜる)+みそ汁
昼食・夕食みそ汁1杯(減塩みそを使うと塩分管理しやすい)+ぬか漬け小鉢
間食・デザート無糖プレーンヨーグルト100〜150g(ナッツや少量のきな粉、ブルーベリーをトッピング)
組み合わせのコツキムチ・ヨーグルト・納豆を日替わりで摂ると腸内細菌の多様性がアップ

💡 効果を高める「組み合わせ食材」

  • ビタミンD(鮭・卵・きのこ・日光浴)→ ビタミンK2と協力して骨を強くする
  • 食物繊維(ゴボウ・キャベツ・オクラ・玄米)→ 善玉菌のエサとなりさらに腸活効果アップ
  • 少量の油(オリーブオイル・ごま油)→ ビタミンK2は脂溶性のため油と一緒に吸収率が上がる

⚠️ 発酵食品で気をつけること

  • みそ・しょうゆ・キムチ・漬物 → 塩分が高め。高血圧や腎臓病の方は量に注意
  • 加糖ヨーグルト・飲むヨーグルト → 糖分が多い。糖尿病・ダイエット中の方は無糖を選ぶ
  • ワーファリン(抗凝固薬)服用中 → 納豆は禁忌。主治医・薬剤師に必ずご相談を
❗ ワーファリン服用中の方は納豆を食べてはいけません  
納豆に豊富なビタミンK2は、ワーファリンの効き目を著しく弱めます。「少しなら大丈夫」ではなく、少量でも影響が出る場合があります。エリキュース・リクシアナ・イグザレルトなどの新しい血液サラサラの薬を服用中の方は問題ありません。ご不明な場合は必ずご相談ください。

院長まとめ 〜毎日の食卓が、あなたの未来を変える〜

今回の内容を整理すると、発酵食品には以下の健康効果が医学研究によって示されています。

✅ 心臓・血管:ナットウキナーゼによる血栓溶解・コレステロール改善・動脈硬化抑制 ✅ 骨:ビタミンK2(MK-7)による骨密度維持・骨折リスク低減
✅ 腸:腸内細菌の多様性向上・腸管バリア機能強化・慢性炎症の抑制
✅ 血糖:低GI食品(納豆)・乳酸菌(ヨーグルト)による血糖コントロール支援

ただし、発酵食品はあくまでも「健康な食生活の一部」です。どんなに良い食品でも、それだけで病気を治したり予防したりすることはできません。

  • バランスのとれた食事
  • 適度な運動
  • 十分な睡眠
  • 定期的な健診・受診

これらが健康の土台であることを忘れないでください。

毎朝の納豆ひとパック、1日1杯のみそ汁、夜の手作りヨーグルト。

特別なことは何もありません。昔から日本人が当たり前のように食べてきたものが、あなたの血管・骨・腸・血糖を、毎日少しずつ守り続けてくれています。

ぜひ今日から、おいしく楽しく「発酵生活」を始めてみてください。食事や生活習慣についてご不明な点があれば、いつでも外来でお気軽にご相談ください。

山内 雅裕
執筆者
山内 雅裕

ぎふ糖尿病・内科クリニックやまうち

院長/糖尿病専門医・内科医

岐阜地区の様々な規模の病院で20年以上にわたり幅広い経験を積んできました。その経験から、病気の予防や早期発見、総合的な診療の重要性を痛感し、当クリニックを開業するに至りました。
当クリニックでは、糖尿病をはじめとする生活習慣病を専門としていますが、総合内科医としても、さまざまな病気の診療に対応しています。
所有資格

日本内科学会 認定内科医

日本糖尿病学会 糖尿病専門医